バイデン氏、イランへの武力行使の「用意ある」 核武装を防ぐため

Joe Biden (left) and Yair Lapid (14/07/22)

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画像説明, アメリカのバイデン大統領(左)とイスラエルのラピド首相が14日、イスラエルで会談した

アメリカのジョー・バイデン大統領は14日、イランの核武装を阻止するために、アメリカは「国力のあらゆる要素を行使する用意がある」と宣言した。

バイデン氏は中東を歴訪中で、2日目のこの日はイスラエルを訪問。ヤイル・ラピド首相と会談し、共同宣言を出した。

イスラエルは、イランの核開発計画を最大の脅威とみなしている。一方でイランは、平和的なものだと主張している。

バイデン氏は15日に、パレスチナ当局との会談を予定している。その後、物議を醸している、サウジアラビア訪問へと移る。

「イランの侵略に立ち向かう」

バイデン氏は、両国の戦略的パートナーシップに関する共同宣言の中で、アメリカの同盟国であるイスラエルとの関係を支える取り組みについて、概要を説明した。

また、アメリカは「他のパートナーと協力し、イランの侵略やかく乱するような動きに立ち向かう」と宣誓。イランによるそれらの動きには、「ヒズボラ、ハマス、パレスチナ・イスラム聖戦機構などのテロ組織」の利用も含まれるとした。

アメリカとイスラエルは長年、イランについて、中東およびそれ以外でテロ行為を国として支援していると非難してきた。イランは、レバノンで力をもつヒズボラや、パレスチナのハマス、ガザ地区のイスラム聖戦機構に、資金や訓練、武器を提供している。

しかしイランは、テロリズムの支援を否定。同国が支援している組織は、イスラエルとアメリカの侵略と戦う抵抗勢力だとしている。

The Vice-President Joe Biden visits Riyadh in 2011

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画像説明, 2011年にサウジアラビアを訪問した際のバイデン氏(中)。同氏のサウジ訪問はそれ以来で、15日にイスラエルから直接移動する

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Presentational white space

イランは核開発計画をめぐり、アメリカや他の西側諸国との関係において危機に陥っている。イランは、イラン核合意(2015年締結)の取り決めに違反し、アメリカのドナルド・トランプ前政権は2018年、同合意から離脱。同合意が崩れ始めるとともに、イラン経済に深刻な影響が及ぶ制裁が復活された。

イランは、核開発は一貫して完全に平和的だと主張している。だが、西側諸国と国際的な核監視団は、納得していない。

アメリカとイスラエルは、イランによる核兵器の取得を決して許さないと繰り返し表明している。ただ、その方法は異なっている。

米政権は、イラン核合意を、より厳しくして復活させたい考えだ。

一方、イスラエルは、イランの核開発の完全な停止を望んでいる。必要とあらば武力行使も辞さないとしている。

「それが最後の手段なら」

バイデン氏は13日、イスラエルの放送局チャンネル12テレビのインタビューで、アメリカは「それが最後の手段であれば」、イランに対して武力を行使する用意があると述べた。

バイデン氏はまた、米民主党内でイスラエルをアパルトヘイト国家と評し、無条件の軍事援助を停止するよう求める声があることについて聞かれると、そうした意見は「少数で間違っている」と返答。同党がイスラエルから手を引く可能性はないと付け加えた。

バイデン氏は15日、パレスチナ自治政府のマフムード・アッバス議長と、ヨルダン川西岸のベツレヘムで会談する予定。

パレスチナ側は、イスラエルとの和平交渉の再開に向け、アメリカにさらなる努力を期待している。また、2019年にトランプ政権によって閉鎖された、エルサレムの米総領事館の再開を望んでいる。同総領事館は、パレスチナにおける事実上の米代表部として機能していた。

ただ、ラピド氏は11月のイスラエル総選挙を前に、パレスチナ側への外交的な働きかけはしないと見られている。さらに、バイデン政権も、米総領事館の閉鎖を覆す準備はまだできていないとしている。

注目されるサウジ訪問

バイデン氏の中東歴訪の主な焦点は、サウジアラビアへの訪問だ。両国は人権問題をめぐって緊張が高まっている。

バイデン氏は、サウジアラビアの事実上の指導者ムハンマド・ビン・サルマン皇太子と、父親のサルマン・ビン・アブドルアジーズ・アール・サウード国王と16日に会談の予定だ。エネルギー供給、人権、安全保障協力などが議題となる。

ただ、この会談をめぐっては、批判の声が出ている。

同皇太子は、2018年にトルコで起きたサウジアラビア出身の反体制ジャーナリスト、ジャマル・カショジ氏の殺害事件で、殺害を承認したとして、米情報機関に非難されている。皇太子は、この疑惑を否定。サウジアラビア検察は、「ならず者の」サウジアラビア人工作員の仕業だとした

バイデン氏は、2019年に大統領選に向けて選挙運動中、米在住で米紙ワシントン・ポストにコラムを書いていたカショジ氏をサウジアラビアが殺害したとし、同国を「現実どおりの、のけもの」にすると誓っていた。

バイデン氏は今回の訪問の目的を、サウジアラビアとの「関係の再構築であり、断絶ではない」と述べている。

バイデン氏は、イスラエルからサウジアラビアに直接移動する最初の米大統領となる。これは、パレスチナ人との連帯のために数十年間にわたってイスラエルをボイコットしてきたサウジアラビアが、イスラエルを徐々に受け入れつつあることを示す、小さいながらも重要なサインとみられている。